「幸せに働く」というと、あまりピンとこない人が多いかもしれない。
何故なら、多くの日本人は「働く事」を苦役だと感じているからだ。
苦役は言い過ぎかもしれないが、事実多くの人が「生活のためのキャッシュを得る」ことを目的に働き、生活を支えるために苦しくても労働しなくてはならないと考えている。
つまり、本当はやりたくない事をイヤイヤやっている状態である。
では、どうしたら私たち日本人は「幸せに働く」ことが出来るのだろうか?
2つの調査結果をもとに進めて行きたいと思う。
目次
World happiness report
いきなり問題提起をしたが、そもそも日本人が幸せに働いていないというのは事実なのだろうか?
答は、分からない。
では、何故前述のような問題提起をしたのか?
いくつかの根拠がある。
ひとつ目はWorld happiness reportの結果だ。
World happiness reportとは、国連が毎年発表している、言わば幸せな国ランキングの事である。
このランキングで日本は156カ国中54位という順位であった。
これは、先進7カ国(G7)の中では最低をなっている。
このランキングと、幸せに働くことと何の因果関係があるのかだが、ランキングの構成要素に注目してみた。
構成要素は以下
・GDP(一人あたり国内総生産)
・社会的支援(頼れる相手が身近にいるか)
・健康寿命
・人生を選択する自由
・他者への寛容さ(過去1か月の間にチャリティ等に寄付をしたことがあるか)
・汚職のない社会
この中で日本が際立って低いのが、「人生を選択する自由」と「他者への寛容さ」である。
人生を選択する自由は何故低いのか?
最も影響を与えているのは、教育かもしれない。
日本の教育は、同一性を重視する傾向があり、皆と同じであることや、たった一つの正解を導き出す事を要求され、その箱の中で優劣をつけて、上位の人は優秀で下位の人は落ちこぼれというラベルを貼られる。
更に、最良の人生は良い大学に合格し、大企業に就職する事だとも教えられるのだ。
これは、ビジネスの場に出てからも言える事で、会社や上司が求める正解を出し、認められ、早く出世をし高い給料をもらう事が、成功のひとつであるとされている。
故に、働く多くの人が会社から評価されるため、上司から褒められるために日々の仕事をこなし、それにより昇進し所得を上げる事に邁進する。
多くの人が、「働く目的は家族の幸せ」と言いながらも、家族との時間を犠牲にしてまで、仕事やそれに関連する人付き合いに労力を割く。
そして、何故そこまでするのか?と問いかければ、帰ってくる多くの答えは「仕方ない」「しょうがない」である。
自分には、この選択肢以外ないのだと・・、「仕方ない」、「しょうがない」を連発する事が、人生を選択する=自分の人生を自分でコントロールする事へ、低い評価を付けさせているのではないだろうか。
他者への寛容さは何故低いのか?
ここでの寛容さとは、前述した通り「過去1か月の間にチャリティ等に寄付をしたことがあるか?」だが、そもそも日本人はチャリティやボランティア精神が低いと言われている。
ちなみに一世帯当たりの年間寄付額は・・
アメリカ:約260,000円
日本:約2,400円
なんと、アメリカは日本の100倍以上の金額を、寄付や募金に費やしているのだ。
これには以下のような原因があると思う。
・寄付やチャリティは“うさんくさい”という前提がある。そもそも寄付したお金は適切な所に届くのか?など。
・誰かに手を差し伸べるのは照れくさい。赤い羽根募金など駅前でやってる時に、募金したいと思いつつも素通りした経験はないだろうか?
このように、日本人は慎重でシャイな一面を持っているので、チャリティの文化が根差さないのかもしれない。
では、仕事においての他者援助、他者貢献はどうだろうか?
現代のビジネスパーソンにおいて、マルチタスクは当たり前、加えて働き方改革による残業削減などで労働時間の短縮を求められ、時間的制約が厳しい状況で多くの仕事量を熟さなくてはならない。
果たして、そのような環境下で自分の仕事を止めてまで、他者援助や他者貢献が出来るだろうか?
もちろん、このランキングで、日本人は幸福度が低いと決めるのは早計ではあるが、上記の基準で測定した場合には、ひとつの事実として認識する必要があるのかもしれない。
エンゲージメント調査(Q12)
もうひとつ。
米国最大の調査会社であるギャラップ社が、全世界1300万人のビジネスパーソンを調査し、導き出したエンゲージメントを測定した「Q12(キュー・トゥエルブ)」の結果によると、日本企業はエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」の割合が6%で、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位レベルだった。
更に、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は23%、「やる気のない社員」は71%に達したのだ。
この結果を見る限り、日本のビジネスパーソンの90%以上の人たちが、日曜日の夜を憂鬱に過ごしている事が伺える。
もちろん、こちらのデータも100%鵜呑みにする必要はないと思うが、現実は如何だろうか?
参照:米ギャラップ社
そしてもう一つの根拠は私の経験である。
23年に及ぶサラリーマン生活で、本当にイキイキと働いている人は、ほんの僅かしかいなかった。
あくまでも主観であるが、仕事が楽しくて楽しくて仕方ないといった人は希少であろう。
しかし、一方で会社によっては、社員の90%以上がイキイキと幸せに働く会社があるのも事実だ。
その違いは何なのだろうか?
幸せに働くために
では、幸せに働くにはどのようにすれば良いのだろうか?
慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の教授である前野氏によると、人が幸せに働くために必要な4因子があると著書で仰っている。
それが以下である。
・やってみよう因子⇒目的に向けてチャレンジし、その中で成長を実感出来ている感(自分の人生を自分でコントロールする)
・ありがとう因子⇒他者との関わりの中で、繋がりを感じ感謝の気持ちを持ってる感(他者への寛容さや貢献)
・なんとかなる因子⇒悲観的ではなく楽観的で、自己否定ではなく自己受容が出来てる感
・ありのままに因子⇒他者と比較可能な、地位や報酬に目を向けるのではなく、自分が実現したい事にひたむきになれいる感
奇しくも、World happiness reportで日本人が低いとされる2つの要因が、前野氏が提唱する幸せに働くために必要な4つの因子に入っている。
この4因子を、組織に置き換えるとこのようになるのではないだろうか。
・報酬や昇進だけが未来にあるのでではなく、社員が仕事を通じて実現したい未来を描けている組織。
・人間関係の摩擦による、不要な腹の探り合いに労力を割くのではなく、目標や目的に向かって建設的かつ協力的な繋がりがある組織。
・Whyを中心とした管理型マネジメントではなく、Whatを中心とした委任型マネジメントが主体の組織。
・短期的結果(利益)だけではなく、未来のスケールに繋がる種をどれだけ蒔けているかの長短2軸での評価が出来る組織。
如何だろうか?
前出の前野氏によると幸せに働く人は、そうでない人と比較して創造性が300%
生産性が130%発揮されるそうだ。
出典:幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える(内外出版社)
当然だと思う。
砂場で砂遊びがしたくてたまらない子供が作る砂の城と
ガキ大将にイヤイヤ砂場に連れて来らた子が作る砂の城
どちらが、立派な砂の城になるかは明白である。
人生の大半を共にする仕事が、やらされ感満載だったら人生そのものがつまらない・・
最後に・・
では、組織の風土や仕組、制度を変えないと「幸せに働く」ことは実現出来ないのだろうか?
そんな事は無い。
全ては自分がどう捉えるかである。
自分の仕事に社会的意義を感じ、それが自分自身の目的としてワクワクする事が出来れば、それそのものが「幸せに働く」という事なのではないだろうか。
働き方コーチングとは・・
全ての働く人たちが「自分らしく」、「イキイキと」、「楽しく」働くための変革支援メソッドです。
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